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要注意人物

 彼と初めて会ったのは、夜の闇の中。
 月と炎に照らされて、守るべき方に剣を向けていた。

「姫神様、姫神様っ」
 呼びかけに、応えはない。傷口から滲む血。
 もう一度呼びかけようと思ったとき、影がよぎった。
 振り仰げば大きな鳥のようなものが何匹も、空を旋回している。
 敵――
 疑うはずもない。つい先程、怪我したすずめが魔物に化けた。
 いや、魔物がすずめに化けていた。
 気を失った姫神様を何とか森のほうに、空から見えない場所に移動させる。
 僕よりいくつか上のその人は、細くて華奢で。
 なのに、長い時間支える事が出来ない。まだ子どもだから。
 もっと力があれば、姫神様を安全な場所へ運べるのに。
 こんな、怪我を負わせなくても済んだのに。

 上空から歓喜に満ちた叫びが聞こえた。
 見つかった――!
 短剣を手に空を見上げる。
 鳥のようで鳥でないもの。獲物を認めて滑空してくる。
 相手は二匹。こっちの武器は短剣だけ。
 ……かないっこ、ない。
 せめて、せめて姫神様が少しでも怪我をしないように。
 覚悟を決めて目を閉じた。

 嫌な音がした。
 一拍遅れて、大きなものが地面に落ちる音。
 いたく、ない?
 恐る恐る目を開けると、ひゅんと風を切る音と同時に知らない男の声がした。
「妙なところで会うもんだな」
 振り下ろされた事でまた銀の輝きを取り戻した剣。マントと簡易な旅装を纏った黒髪の……バル=ジーで姫神様を斬った男。
 意外な事に。本当に意外な事に。
 助けを求めたら、すんなり聞き入れてくれた。
 背中の傷は酷くて、姫神様は目を覚まさない。
 僕が手当てをしている間。剣士はそれを見ているだけだった。
 今にも死にそうだと騒いだら、疑わしそうにしていたけど。
「どうしてここに……? まさか助けてくれたの?」
「誤解すんのは勝手だが。
 お前が魔族である限り……今ここでたたっ切ってもいいんだぜ」
 目を覚ました姫神様に、そう言って剣を突きつけた。
 とっさに動いて手にした短剣でそれを防ぐ。
 そうしたら、彼はあっさり退いた。
 それどころじゃなく、その後僕たちを大僧殿まで連れて行ったりもした。

 思えば当初から分かりにくい人だった。
 姫神様を敵だと言っているにもかかわらず、剣を向けていたにもかかわらず。
 いつも見ていた。そして助けていた。
 『ディアナ様』の彼を見るその瞳に、敵意や恐れがなくなったのは……あの綺麗な青が失われてから。
 初めて見たときのあの勘は、やっぱり正しかったんだ。
 あいつは注意しないといけない。
 何故なら――彼は姫神様を殺そうとしたから。
 そう思っていた。
 主不在の玉座を見て、ようやく気づいた。
 本能的に、最大の強敵だと認識したんだと。

 今更気づいたって遅すぎるけれど。

語り部アベル。……誰だっけとかって言われそうで怖いですねぇ。
このネタ考えていたせいで、その日の日記が恐ろしく暴走する事に相成りました。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/